夏の日の訪問者


夏の暑い日、シャカがいつものように座禅を組んでいると、
玄関から瞬の声が聞こえました。
「こんにちはー。シャカ、いますかー?」
「うむ、こちらにいる。上がりたまえ。」
「はぁい、おじゃましまーす!」
ほどなく瞬の元気な足音が聞こえてきました。

「こんにちは。シャカ、何してるのー?」
「・・・座禅を組んでいるのだよ。」
「ふぅん・・・。」
「それで、何か私に用かね?」
「あっ!あのね、あのね、瞬、スイカもってきたのー。
瞬と兄さんとじゃ食べきれなかったから
シャカと一緒に食べようと思って・・・。」
「・・・その一輝はどうしたのかね?」
「エスメラルダちゃんのところにスイカ持って行ったよー。
あのね、瞬、急いで持ってきたから
スイカ冷たくっておいしいよ!食べてみて!」

そう言ってスイカをすすめてくれるのですが、
残念ながら、シャカはまだ修行中なので、
スイカを食べるわけにはいきません。
瞬には悪いのですが、そう言って断ろうと思い、
シャカは、そおっと片目を開けて瞬を見ました。

しかし、そこで目に飛び込んできたのは
瞬の小さな手に抱えられた
とってもとっても、甘くておいしそうな、真っ赤な真っ赤なスイカでした。

「・・・・・・・・・・・・・・瞬・・・。」
「なぁに?」
「・・・塩を持って来る。」
「うんっ!」

台所にお塩を取りにいく間、
シャカは、こう自分に言って聞かせました。
自分は、別に甘くて冷たいスイカの誘惑に負けて
修行を中断したわけではないのです。
瞬のせっかくの心遣いを無にするのはかわいそうなので
仕方なく修行を中断したのです。
ええ、・・・多分。そうに違いないのです。